Project Story #01
OKAYAMA ACCENT T-SHIRT(クセT)
What’s work?
岡山デスティネーションキャンペーンをきっかけに生まれた「OKAYAMA ACCENT T-SHIRT(通称:クセT)」。
従来の広告領域の仕事とは違い、今回は商品そのものをゼロから企画。マーケティングや商品開発という事業の根底から販売管理まで、一貫して携わりました。
広告代理店という枠組みを超えて、新たな価値創造に挑んだ舞台裏をメンバー3名の対談から紐解きます。
従来の広告領域の仕事とは違い、今回は商品そのものをゼロから企画。マーケティングや商品開発という事業の根底から販売管理まで、一貫して携わりました。
広告代理店という枠組みを超えて、新たな価値創造に挑んだ舞台裏をメンバー3名の対談から紐解きます。
Project Member
(左から順に)
H.H…SNSや販促を担当。入社1年目よりプロジェクトに関わる。
Y.I…プロモーションや制作物進行を担当。現在はメイン担当としてプロジェクトに関わる。
H.T…プロジェクトリーダーとして、初年度の立ち上げに関わる。
※所属は取材当時のものです
H.H…SNSや販促を担当。入社1年目よりプロジェクトに関わる。
Y.I…プロモーションや制作物進行を担当。現在はメイン担当としてプロジェクトに関わる。
H.T…プロジェクトリーダーとして、初年度の立ち上げに関わる。
※所属は取材当時のものです
01 プロジェクト背景とその始まり
『OKAYAMA ACCENT T-SHIRT(以下、クセTと表記)』はどのようなきっかけでスタートしたのですか?
H.T:きっかけは、公益社団法人 岡山県観光連盟様(以下、観光連盟様と表記)から「デスティネーションキャンペーンを盛り上げたい」というご相談をいただいたことでした。
Y.I:通常であれば、観光地の魅力を前面に出した広告やSNSキャンペーンなどが王道の方法でした。
H.T:でも、全国各地の観光地が魅力的な発信を行っています。岡山観光への動機をうむ大きな「差」が出しにくくなっているというのを、様々な案件に携わる中で感じていました。
H.H:しかも今って、本当に情報が多いじゃないですか。広告もコンテンツもあふれている。見る側の時間や集中力も限られているし、「広告っぽい」と思われた瞬間にスルーされてしまうこともある。SNS中心の人もいれば、テレビや新聞を見る人もいて接点もバラバラです。
Y.I:だから、単純に情報を出すだけでは響かない、という危機感がありました。
H.T:そこで考え方を変えました。「どう伝えるか」ではなく、「どうしたら興味を持ってもらえるか」「どうすれば好きになってもらえるか」。広告として押し出すのではなく、口コミが自然に広がっていく仕組みをつくれないか、と考えたんです。
Y.I:そのためには、「今ある観光情報をそのまま届ける」のではなく、「新しい地域の楽しみ方を創造する」方が効果的だと考えました。
数ある観光資源の中で、「岡山弁」にフォーカスしたのはなぜですか?
H.T:2022年当時は、朝ドラや岡山出身の芸人さんの影響もあって、岡山弁に注目が集まっていたタイミングでした。観光連盟様とプロジェクトチームを組んで検討する中で、「今だからこそ岡山弁を企画にするのはどうか」という新しい切り口をいただきました。
Y.I:そこから一気にアイデア出しが始まりました。岡山色の強い飲食企画、駅ナカ寿司店とのコラボ、県外に電話BOXを置く案など、本当に幅広く出しました。最終的には30案以上はあったと思います。
H.T:その中から観光連盟様と議論を進め、実現可能性や予算感、どれくらい広がりが見込めるか、話題性はあるか。一つひとつ整理しながら検討していきました。
Y.I:最終的に、「岡山弁」をお土産にするアイデアが一番観光誘客につながりやすく、広げていけそうだという結論になりました。Tシャツに決まったのも、ひとつの思いつきというより、いくつものアイデアを組み合わせた結果でした。
様々な角度から企画を出しました。
02 「誰かに伝えたくなる」仕掛けをちりばめた制作期間
制作はどんな風に進んだのでしょうか?
Y.I:ファッションとしてのTシャツを作るのは、メンバーみんなもちろん始めてのこと。素材選びも、サイズ展開も、ロットの考え方も分からない。まさにゼロからのスタートです。
H.T:未知の領域ではありましたが、マーケティングやクリエイティブといった自分たちの強みをどう活かせるか、というチャレンジでもありました。
Y.I:常に意識していたのは、「誰かに伝えたくなる」仕掛けをちりばめることです。広告ではなく、口コミを広げていくにはこの仕掛けが欠かせないと考えました。
H.H:例えばデザイン面では、岡山弁と英語訳を併記して、岡山弁の意味とイラストのギャップを楽しめる仕上がりにしました。「実はこういう意味なんだよ」と言いたくなったり、お土産として渡したときに、会話が生まれる。それが狙いでした。
H.T:言葉選びに関しては、観光連盟様ともかなり議論しましたね。「こられー(come on)」のように観光と相性のいい言葉も入れましたし、デニムやフルーツパフェなど岡山らしいモチーフも織り込んでいます。
Y.I:「メイドイン岡山」であることにもこだわり、イラストは岡山県出身の金安亮さんにお願いしました。「レトロだけど今っぽい」テイストが、若い人にもハマるし、上の世代も抵抗なく手に取れる、ちょうどいいバランスでした。
H.T:Tシャツの印刷やパッケージなどのデザイン制作も、岡山の会社なんです。
「クセT」という商品名にはどんな思いが込められているのでしょうか?
H.T:正式名称は「OKAYAMA ACCENT T-SHIRT」で、岡山のカルチャーである「岡山弁」をファッションやおでかけのアクセントにしてほしいとう思いを込めています。
Y.I:岡山弁と言えば特徴的なイントネーション。「訛り・発音」を英語にすると「accent」ですよね。ちょうど芸人さんの影響で「岡山弁」=「クセがすごい」というイメージが浸透していた頃でした。その「アクセント」と「クセ」を掛け合わせて、「クセT」というネーミングにしました。
H.T:例えば「クセT発売!」と記事タイトルに出たら、それだけで少し気になる。商品そのものだけでなく、言葉として拡散しやすいかどうかまで設計しました。
Y.I:商品ページ用の撮影も行いました。「方言TシャツはネタTが多い」というイメージを逆手に取りました。外国人モデルに着てもらっておしゃれに見せる、とか。その絶妙なズレをあえて狙っています。
H.H:撮影は本当に細かく詰めましたよね。限られた予算の中で、どうすればTシャツを主役にしながら、きちんとスタイリングとして成立させられるか。ヘアメイクもポージングもゼロからつくっていきました。
Y.I:単に商品写真を撮るのではなく、「岡山でこのTシャツを着て、パフェを食べに行く」みたいに、着た後の行動まで想像できる世界観をつくりたかったんです。
すべて岡山県内で撮影。クセTシャツを着て岡山の街歩きを楽しむイメージに。
03 発売後の反響と岡山弁の広がり
発売後の反響はいかがでしたか?
Y.I:いざ始まったデスティネーションキャンペーン。期間中は想定以上の反響をいただき、当初の制作枚数は1,000枚の予定でしたが、最終的には2,600枚以上を販売しました。
H.H:Tシャツを自動販売機で売るという方法にもかなり注目が集まったと思います。
H.T:Tシャツ単体だと、ニュースとしてはやや弱い。そこで自動販売機と組み合わせることで、話題化のフックをつくりました。設置場所は岡山の玄関口の岡山駅。「岡山に行かないと買えない」という限定性も持たせました。
H.H:オンラインでも簡単に買える時代に、あえて岡山駅限定にしたんです。
Y.I:観光連盟様にもご協力いただいて、岡山出身の芸能人の方々にもクセTをプレゼントしました。
H.H:想像以上に多くの方が着用してくれましたね。
H.T:反響が大きく、1日で完売してしまう日も。お客様のご要望にお応えする形で、実店舗やオンラインでの販売にまで広がりました。「Tシャツを買いに岡山に行った」「アイドルへのプレゼントに買った」など、想定していた「誰かに伝えたくなる状態」は確実に起きていました。
デスティネーションキャンペーンが終わった後も、「クセT」プロジェクトは続いています
Y.I:当初はデスティネーションキャンペーン中だけ販売する予定でしたが、好評につき販売期間を延長しました。
H.T:この数年で、観光誘客や岡山弁の認知拡大という点では、一定の手応えを感じています。街中で実際にTシャツとして着られているのを見かけるようになりましたし、タレントの方が着用してくださったり、テレビ番組で取り上げられたりと、徐々に浸透してきた印象があります。2年目までは観光連盟様と協働し、今はビザビのみで事業運営しています。
Y.I:第2弾からは、ステッカーやアクリルキーホルダーなど商品のラインナップを増やしました。
H.H:Tシャツって、お土産としては少し価格帯が高めですよね。もう少し気軽に誰かへ渡したくなるものを作りたいという意見から生まれました。
Y.I:アイデア出しでは、自分たちが「これなら欲しい」「これなら買う」と思えるものを基準にしています。自分たちがリアルターゲットだからこそ、欲しいと思うものを商品にしました。
4年間で発売した商品は8種類、54点にのぼります
現在クセTは岡山県内外の10箇所で販売されています
Y.I:ありがたいことに、販路は少しずつ広がっています。実は、売り場のデザインにも私たちが関わっているんです。
H.H:お土産売り場って、きびだんごのような定番商品がずらっと並んでいますよね。その中でどうすれば「あれ、何これ?」と目を留めてもらえるかを考えました。
Y.I:Tシャツは平置きだと埋もれてしまうので、専用ラックやディスプレイを設置して、しっかり“立たせる”。売り場も一つのメディアだと捉えています。
H.T:販路は最初、JR岡山駅から始まりました。売上が伸びていく中で、空港やサービスエリアにも広げています。こちらから提案することもあれば、「置きたい」と声をかけてもらうこともあります。
04 クセTの今後の展望とプロジェクトから得た学び
2025COLLECTIONでは、コラボ商品も開発されました
クセT 2025COLLECTION。「うらじゃ」と「ファジアーノ岡山」とコラボしました。
Y.I: 4年目に入ると、どうしても「新鮮さ」は薄れてきますよね。そこで、コラボレーションに踏み切りました。
H.H:クセTのコンセプトは「クセになる、カルチャーをアクセントに」。県民に愛されている文化とコラボすることで、「岡山ってそんな文化あるんだ」と県外の方にも知ってもらいたいと考えました。
Y.I:コラボ第1弾では、岡山の夏の風物詩『うらじゃ』。第2弾では、『ファジアーノ岡山』とコラボしました。
H.H:うらじゃの踊り連の方が練習着に使ってくださったり、ファジアーノ岡山のサポーターの方がクセTを着て試合観戦をしてくださったり。新しい層との接点も生まれています。
H.T:かなり多くの岡山県民の方が着てくださり、想像以上にみなさん岡山のことが好きなんだと感じました。
このプロジェクトを通じてどんな学びがありましたか?
H.T:一番は、仕事の幅が広がったことですね。普段の広告業務は、既にある商品などをどう伝えるかを考える仕事です。でも今回は、商品そのものの設計から始まった。価格も、販売場所も、ビジュアルも、プロモーションも。全部を自分たちで決めるのは初めてでした。
Y.I:そこは本当に大きかったですよね。ノベルティをつくることはあっても、「売る前提」で商品開発をするのはまったく別物でした。在庫もありますし、売れなければ自分たちの責任ですから。
H.T:でもその経験をした分、「他の魅力が足りないのではないか」「販路を拡大するべきではないか」と立ち止まって考える視点も身につきました。
Y.I:企画して終わりではなく、販売して、数字を見て、改善する。その一巡を経験できたのは本当に大きかったです。
H.H:私は、地域の仕事がしたいという思いで入社したので、1年目からこういった仕事に関わることができた貴重な経験になりました。
H.T:デスティネーションキャンペーンの枠組みの中で進めてきましたが、単発の施策では終わらなかったのも良かったですね。観光連盟様との包括連携協定のもと、横のつながりを活かしながら進められたからこそ、継続できたと思っています。
H.H:県外の方から「自分たちの県にもこういう企画が欲しい」と言われたこともありましたよね。
Y.I:ありましたね。キャンペーン施策というより、継続的なコミュニケーションツールになってきた実感があります。Tシャツの累計販売枚数は10,000枚を超え、ブランドの輪郭が少しずつ形になっている感じがします。
H.T:広告制作以外に、「自ら商品を生み出す」という選択肢が社内に増えたことも大きいですよね。まさに「脱・広告代理店」的な仕事だったと感じています。事業の開発段階から携わり、地域の新たな価値を自分たちで創造する。伝えるという枠組みを超えた経験をできたことが、このプロジェクトから得た最大の学びだと思います。